製品の長期信頼性と安全性を確保するためにも、各分野におけるマイグレーション現象のリスクとその対策を正しく理解・実践する必要があります。ここでは、試験事例を取り上げながら、マイグレーション対策のポイントについて解説します。
マイグレーション試験では、評価対象となる製品や部品、想定される使用環境によって、必要な試験条件が異なります。たとえば、狭ピッチのプリント基板や電子部品では低電圧領域での絶縁信頼性評価が重視される一方、車載機器やパワーデバイスでは高電圧・高温高湿環境を想定した評価が求められる場合があります。
そのため、業界や用途ごとに「どのような環境で使われるのか」「どの程度の電圧がかかるのか」「どのくらいの期間、信頼性を維持する必要があるのか」を整理したうえで、試験条件を検討することが重要です。
マイグレーション試験の条件は、まず評価対象となる部品や材料、実際に使われる環境をもとに検討します。PCB、半導体パッケージ、車載電子機器、通信インフラ機器、医療機器などでは、想定される湿度・温度・電圧・使用期間が異なるためです。
たとえば、屋内で使用される電子部品と、屋外や車載環境で使用される機器では、受けるストレスの種類が変わります。自社製品の使用環境を想定し、湿気、結露、温度変化、塩害、電圧負荷など、どの要因を再現すべきかを整理しておきましょう。
印加電圧は、マイグレーション試験の重要な条件の一つです。狭ピッチのプリント基板や微小電子部品では、数V〜数十Vといった低電圧領域での評価が必要になる場合があります。わずかな電圧差でも絶縁抵抗の変化やデンドライト発生につながる可能性があるためです。
一方、EV・HV車向け部品、パワーデバイス、高電圧センサ基板などでは、より高い電圧を想定した評価が求められます。低電圧評価と高電圧評価では必要な試験機の仕様も異なるため、対象物に合った印加電圧範囲を確認しておくことが大切です。
マイグレーションは、水分や湿度の影響を受けやすい現象です。そのため、温度・湿度条件は、実際の使用環境や加速評価の目的に合わせて設定する必要があります。高温高湿環境、温湿度サイクル、結露環境など、再現すべきストレスを明確にすることが重要です。
また、試験時間や判定基準も業界によって考え方が変わります。車載電子機器、医療機器、航空機器のように安全性や長期信頼性が重視される分野では、短時間の確認だけでなく、長期使用を想定した加速試験や絶縁抵抗の変化を継続的に確認する視点が求められます。
業界別に見ると、PCBや電子部品では、低電圧・高湿度環境下での絶縁抵抗の低下やデンドライト発生の有無が重要です。半導体パッケージでは、微細配線や封止材の影響を踏まえ、高温高湿環境や内部配線へのストレスを確認する必要があります。
車載電子機器では、温度サイクル、高湿度、高電圧条件などを考慮した評価が求められます。通信インフラや基地局では屋外環境や塩害、長期稼働を想定した条件、医療機器や航空機器では不具合発生時のリスクを踏まえた慎重な条件設定が必要です。
▼スクロールできます▼
| 対象分野 | 確認したい主な条件 | 評価のポイント |
|---|---|---|
| PCB・電子部品 | 低電圧、高湿度、狭ピッチ環境 | 絶縁抵抗の低下やデンドライト発生の有無を確認 |
| 半導体パッケージ | 高温高湿、微細配線、封止材の影響 | 内部配線や端子間の短絡リスクを評価 |
| 車載電子機器 | 温度サイクル、高湿度、高電圧条件 | ECUやセンサーの誤作動・短絡リスクを確認 |
| 通信インフラ・基地局 | 屋外環境、湿度、塩害、長期稼働条件 | 長期運用時の絶縁劣化や腐食リスクを評価 |
| 医療機器・航空機器 | 高信頼性を前提とした加速試験条件 | 安全性に関わる不具合リスクを慎重に確認 |
自社製品に適した試験条件を検討する際は、対象物の種類だけでなく、印加電圧、温度・湿度、試験時間、判定基準を総合的に確認することが大切です。条件設定に迷う場合は、試験機メーカーや受託試験に対応している会社へ相談し、評価目的に合った試験方法を検討しましょう。
プリント配線板(PCB)の設計では、絶縁層内に存在する微量の金属イオン(主にNa+、Cl-など)が湿度や電圧ストレスの影響を受けて移動し、絶縁破壊や金属デンドライトの成長につながることが確認されています。
対策としては、基材に吸湿性の低い材料を使用し、パターン間のクリアランスを拡大するなどレイアウトを最適化するとともに、製造工程ではリフロー後のフラックス残渣を高精度で洗浄・乾燥する工程を追加することが有効です。
半導体パッケージ内部では、封止樹脂中の残留ハロゲンイオンや、接合部材に含まれる金属イオンが高湿度・高電界環境下で移動し、端子間に金属フィラメントが形成されることで短絡を引き起こすというリスクがあります。複数のメーカーでは、マイグレーションの発生源となる成分を低減するため、封止樹脂組成の見直し、加水分解しにくい材料の選定などを実施しています。
車載電子機器は、マイグレーションによる絶縁劣化が誤動作や安全リスクの要因になります。−40℃から+85℃を超える温度サイクルや、90%以上の高湿度下で使用される環境が多いためです。
自動車部品メーカーでは、ECUやセンサーモジュールに対して、コネクタ部の防水構造設計、鉛フリーハンダの選定、フラックス除去処理を強化。加えて、信頼性を確保するために加速寿命試験(85℃/85%RH・1000時間)を実施し、電気的短絡の兆候が見られないか(絶縁抵抗が108Ω以上を維持できているか)を確認しています。
リチウムイオン電池におけるマイグレーションは、リチウムイオンの正常な移動による充放電機能と、材料や成分の偏った移動による性能低下という二つの側面を持ちます。バインダーの偏在、金属イオンの移動、デンドライトの形成などは、内部短絡や発煙・発火といった問題を引き起こす可能性があります。
リチウムイオン電池の安全性は、異常時における危険回避も含めて評価されるべきであり、設計・材料選定・製造工程全体での安全性試験が不可欠です。製造工程では超低湿度環境の維持、安定したSEI膜の形成、バインダー分布の均一化などが重要となります。EPMAを用いたバインダーのマイグレーション評価事例は、製造条件の最適化や工程改善に貢献しています。
電子材料におけるマイグレーションは、樹脂の吸湿性、イオン性不純物の残留、難燃剤の影響などが原因で発生します。特に樹脂材料は水分を吸収しやすく、不純物や添加剤が残留することでマイグレーションのリスクが高まります。マイグレーションを抑制するためには、吸湿性が低く不純物の少ない樹脂の採用、適切な難燃剤の選択、イオン捕捉剤の添加などが有効です。試験による早期発見は、材料選定や設計修正につながり、製品の信頼性向上に貢献します。
医療機器は、湿度や材料の影響によってイオンマイグレーションが進行しやすく、わずかな劣化でも致命的な不具合を引き起こす恐れがあります。湿度やフラックス残渣によるリスク、加速試験の活用、材料や設計による対策など、信頼性を確保するための視点が求められます。特に高湿度環境で使用される機器では慎重な設計が不可欠です。
車載電子機器では、温度変化や湿度、塩分などの影響でイオンマイグレーションが進行しやすく、微小な腐食が誤作動や短絡を引き起こす恐れがあります。高温多湿下での加速試験や信頼性規格に基づく評価が求められるほか、材料選定やコーティング、基板レイアウトなど設計段階での予防的配慮も不可欠とされています。
通信インフラ機器は屋外での長期稼働を前提とするため、湿度・塩害・温度変化などによってイオンマイグレーションが進行しやすくなります。回路の微細化が進む中、設計や材料に求められる耐環境性は一層高まりつつあります。信頼性試験や防湿設計、点検体制など多面的な対策が、安定運用を支えるうえで欠かせません。
スマートフォンは高密度で精密な構造を持つため、わずかな湿気でもイオンマイグレーションが進行しやすく、回路のショートや誤作動を引き起こすリスクがあります。日常使用で想定される水濡れや結露、狭ピッチ実装による影響を踏まえ、信頼性試験や防水設計、材料選定など多角的な対策は極めて重要。開発段階での検証が不可欠です。
家電製品は湿気や結露、経年使用による影響でイオンマイグレーションが進行しやすく、長期使用による絶縁不良やショートのリスクが指摘されています。特に高湿度環境や電源回路は影響を受けやすく、設計段階の防湿対策や規格準拠の信頼性試験が重要です。使用環境やメンテナンスによっても劣化の進行に差が生じるため、幅広い視点での対策が求められます。
人命に関わる航空機器。常に過酷な温湿度変化や気圧差にさらされているため、イオンマイグレーションによる劣化は避けなければならない重要事項です。結露や電圧による短絡リスクを抑えるには、密閉設計や材料選定、防湿コーティングなどの対策が必要です。RTCA DO‑160などの試験規格を活用し、長期信頼性と安全性の評価が厳密に行われています。
湿度や電圧などの条件が重なることにより発生するセンサのイオンマイグレーションは、故障や誤動作の原因となります。イオンマイグレーションのリスクを想定した材料選定やコーティングによって水分の侵入を抑えるなど、設計段階での工夫が求められます。マイグレーション試験機による試験を行うことで潜在的な不具合を事前に把握しやすくなります。
コンデンサの内部でイオンマイグレーションが生じることがあります。性能低下や故障を招く要因となるため、トラブルが生じにくい材料の選定や設計が重要です。外観では異常がわかりにくく、実際の使用環境で時間をかけて不具合が現れる場合もあります。試験環境を再現できるマイグレーション試験機でリスクを評価しましょう。
印加電圧の違いによって求められる試験環境は大きく異なります。ここでは、対象物に合った試験を強みとする受託試験会社を、2社ピックアップしてご紹介します。

引用元:IMV公式サイト
https://www.landingpage-synergy.com/k4yeiagc/

| 印加電圧設定 | 1.0V~250V |
|---|---|
| 試験所数 | 日本国内7・海外3拠点 |

引用元:ESPEC公式サイト
https://www.espec.co.jp/products/measure-semicon/25kv/

| 印加電圧設定 | 2.5kV |
|---|---|
| 試験所数 | 国内6拠点 |