異常の兆候を正しく評価するためには、適切な試験と測定が欠かせません。特に、(イオン)マイグレーションで測定する絶縁抵抗の評価においては、「どの程度の抵抗低下を故障と見なすか」という基準設定と「それを見逃さず正確に測定する」測定手法の整備が不可欠です。
この記事では、代表的なマイグレーション試験とその測定手法を紹介し、評価精度を高めるための設計・運用上のポイントを解説します。
マイグレーションの評価試験では、PCB(プリント基板)上の導体間に直流電圧を印加し、85℃/85%RHなどの高温高湿環境下で絶縁抵抗の時間変化を測定するのが一般的です。あえて強い負荷をかけて金属イオンの移動や析出が進行する様子を観察し、マイグレーションによる絶縁劣化のリスクを判断します。
マイグレーション試験で主に使われるサンプルは、櫛形パターン基板と呼ばれる試験用のプリント基板です。これは絶縁基板上に互い違いに噛み合う櫛歯状のパターンで、ギャップ(導体間隔)が均一に設計されています。広く用いられているのは0.318 mm(12.5 mil)で、このタイプはJISやIPC規格で標準化されています。
また、櫛形パターン基板は櫛歯電極同士が平行かつ均一間隔で配置されるため、一枚の基板で複数チャンネルの測定ができるという利点があります。
マイグレーション試験では、常時測定(In-Situ法測定)によってリアルタイムで絶縁抵抗の変化を追跡することが重要です。以下に評価試験の一般的な流れとポイントを示します。
| 1. 試験サンプルの準備 | 標準的なくし型試験基板を用意します。目的に応じて試験基板に実装やはんだ付けを行い、評価対象となる付着物を再現します。基板材料そのものの特性を評価する場合は、洗浄処理のみを行ったクリーンな状態で試験を行うこともあります。 |
|---|---|
| 2. 恒温恒湿槽への設置 | 試験基板は恒温恒湿槽(環境試験チャンバー)内に設置し、あらかじめ所定の温度と湿度に設定します。一般的には、温度85℃・湿度85%RHといった高温高湿状態に安定させた後、直流電圧を印加。槽内での配線には、漏れ電流を防ぐ目的で、シールド線やテフロン被覆の治具を使用します。 |
| 3. 直流電圧の印加 | 櫛形パターン基板の一方の電極群を陽極(+)、もう一方を陰極(−)として、直流バイアス電圧を印加します。印加電圧は数ボルトから数百ボルトまで設定可能です。電源装置には、高抵抗状態においても微小電流を安定して検出できる測定精度の高い機器を使用します。 |
| 4. 絶縁抵抗の常時モニタ | 回路に流れる電流や電圧降下を連続的に監視し、絶縁抵抗を逐次算出します。常時測定では、数秒〜数百ミリ秒間隔でデータをサンプリングするのが一般的です。100マイクロ秒(µs)以下の短時間の抵抗低下を測定する専用回路を搭載している場合は、デンドライトが瞬間的に短絡を起こしたタイミングも逃さず検出できます。 |
| 5. 解析 | 所定の時間が経過するか、不良状態が継続して確認された時点で検査終了です。試験後は顕微鏡観察や元素分析で詳細な解析を行います。試験中に取得した絶縁抵抗の時間変化データは、劣化挙動の解析や寿命予測に活用されます。 |
In-Situ法による測定のポイントは、時間の連続性と高感度検出です。
従来のように24時間ごとにチャンバーからサンプルを取り出して抵抗測定する手法では、測定の合間に発生した一時的な短絡を見逃すリスクがありました。一方、常時測定法では、絶縁抵抗の変化を連続的に監視できるため、マイグレーションの初期兆候から短絡に至る瞬間までを詳細に捉えることが可能です。
また、測定には精度が求められ、100 Vを印加する条件であれば最大10^13Ω程度までの抵抗値を安定して読み取れる性能が必要です。加えて、複数チャンネルを同時にサンプリングできるシステムを使用することで、複数の試料を並列に評価でき、試験効率とデータの信頼性を一層高められます。
マイグレーションの評価では、恒温恒湿試験(定常高温高湿試験)が適用頻度の高い環境試験です。そのため、試験に使用する温度・湿度・印加電圧といった条件の設計が、評価の精度と信頼性を左右します。
恒温恒湿試験では、国際的に「85℃/85%RH」が広く採用されています。この条件は、高温によって化学反応を促進しつつ、絶縁表面に十分な水膜を維持できるバランスの取れた試験環境です。一方で、より緩やかな条件として「40℃/90~95%RH」も規格で定められており、長時間試験(たとえば1000時間以上)を行う際に用いられることがあります。重要なのは、試料が想定される使用環境に応じて、適切な温湿度条件を設定することです。
また、試験中に結露を避けるためには、温度を必要以上に下げないよう注意が必要です。温度が低すぎると、試料表面で水分が凝結してしまい、本来評価すべきマイグレーションとは異なる劣化(結露腐食)が発生する可能性があります。
印加電圧は、試料間に生じる実効電界強度を考慮して設定します。櫛形パターン基板の場合、導体間ギャップ0.318 mmに対し、数十ボルト程度を印加すると、100~200 V/mm程度の電界強度が得られます(例:50 V印加で約157 V/mm)。
電界強度が高いほどデンドライトの発生時間(寿命)は短くなり、電界強度のn乗に反比例する関係(指数法則)が知られています。そのため、試験時間を短縮したい場合は印加電圧を上げ、実使用に近い条件で評価したい場合は電圧を下げる、といった調整が行われます。
ただし、電圧を上げすぎると発熱や絶縁破壊のリスクがあるため、試料や装置の耐圧範囲を十分に考慮したうえで設定する必要があります。JISやIPCのガイドラインでは、はんだ付け用フラックスの評価に45~50V程度、基板材料の評価には100 V程度を用いる例が示されています。
恒温恒湿試験は、基本的に数百~千時間単位の長時間連続試験として実施されます。たとえば、ある製品で「85℃/85%RHで1000時間、絶縁劣化なし」が求められる場合は、試験も1000時間(約42日間)連続で行われます。
一般的にマイグレーションは数百時間以内で発生しますが、材料特性や表面に残留するイオンの種類・量によって結果がばらつくため、安全マージンをとりつつ試験時間を長めに設定するのが一般的です。常時計測を続けて、所定時間内に短絡(絶縁抵抗の急激な低下)が一度も起きなければ合格、一度でも発生した場合は不合格とする評価方法が広く採用されています。
恒温恒湿試験では、環境条件を一定に保つための装置管理も重要です。印加を開始する前には、試験チャンバー内の温湿度を十分に安定させてから試験を開始し、試験後も急激な乾燥や冷却を避けて試料を取り出します。大気に急に晒されることで試料表面の水分が結露・蒸発し、デンドライト構造が変化してしまう可能性があるためです。
測定配線では高湿中でのリークを防ぐために、高湿下でも耐性のある構造(短距離・絶縁被覆・シールド)を採用することが推奨されています。さらに、多数のサンプルを同時に評価する場合は十分な試料数(例:10枚以上)を確保し、不良発生数のばらつきを把握することも重要な検討項目です。
恒温恒湿による定常試験のほかにも、試験時間の短縮や実使用環境の再現を目的として、さまざまな加速試験手法が活用されています。その代表が、温湿度サイクル試験やHAST(高加速寿命試験)です。
温湿度サイクル試験やHASTは、通常の85℃/85%RH試験では検出できない不具合の抽出や、大幅な試験期間の短縮に役立ちます。ただし、こうした加速試験で得られた結果をそのまま寿命予測に使うと過大評価・過小評価につながるリスクがあるため、加速係数の妥当性や故障モードの一致性については、十分に検討しなければなりません。
高温高湿状態と低温状態を繰り返し、結露(水滴の発生)と乾燥を交互に発生させるのが温湿度サイクル試験です。
たとえば、「25℃⇔65℃/90%RH」のような条件で数時間単位のサイクルを繰り返し、その間に直流電圧を印加します。定常的な恒温恒湿試験よりも早く短絡(ショート)に至るケースが多いため、短時間でマイグレーションの兆候を捉える加速評価手法として非常に有効です。
また、乾燥時にはデンドライトが一部溶解・蒸発し、湿潤条件に再び成長を再開するという動的な挙動を示すことがあります。間欠測定のみ行うと異常を見逃す可能性があるため、サイクル試験では常時測定(In-situモニタリング)が特に重要です。
自動車分野ではJASO規格に結露試験条件が定義されており、各社がこれを参考に独自の試験条件を設定しています。
高温・高湿環境に「加圧」の条件を加えることで、試験時間を大幅に短縮する評価手法です。特に、基板材料や部品内蔵基板におけるCAF(導電性陽極フィラメント)の評価に使用されています。通常の恒温恒湿試験(85℃/85%RH)に比べ、HASTでは110〜130℃程度の高温と、85%RH前後の未飽和湿度を密閉された加圧環境下でマイグレーションを再現します。
HASTの大きなメリットは、加速係数が非常に大きいことです。通常の85℃/85%RH試験と比較したとき、HAST(110℃/85%RH)では、絶縁劣化が数十倍〜100倍以上の速さで進行するとされ、500〜1000時間かかっていた評価を数十時間に短縮できます。
HAST実施には専用の加圧加湿槽と対応計測器が必要ですが、近年はいくつかの受託試験機関でマイグレーションHAST試験を実施可能です。
マイグレーション試験の結果は、主に「絶縁抵抗の時間変化(絶縁抵抗-時間特性)」として現れます。結果を正しく読み解いて故障メカニズムを裏付けることは、信頼性評価において非常に重要です。ここからは、評価結果の見方と解析方法について解説します。
絶縁抵抗の時間変化は主要な評価指標です。試験中および試験後の抵抗値が一定水準を維持できているかが合否判定の基準となります。一般に、導体間の絶縁抵抗が高いほど絶縁信頼性が良好で、著しい低下(オームオーダーまで落ちるような短絡状態)が発生すれば不良と見なされます。
業界ではしばしば、1×10^8 Ω(1億オーム)を一つの基準としています。たとえば、はんだ付け用フラックスの規格では、85℃/85%RH・168時間の条件で、試験終了時の絶縁抵抗が108Ω以上であることが合格要件とされます。
実際の試験では、以下のような判定方法が一般的です。
一時的に抵抗が低下してもすぐに回復する場合(いわゆるリークタッチ現象)は、試験規格ごとに判断基準が異なりますが、閾値を下回った時点で不合格とするのが通例です。つまり、マイグレーション試験では、一度でも導通故障が発生すれば「信頼性上問題あり」と判断されます。
絶縁抵抗は通常、印加している直流バイアスと漏れ電流を計算して求めます。試験後に再測定を行う場合は、高電圧で微小電流を安定測定できるメガオームメータを使用します。
たとえばJIS Z 3197では、DC100V印加時に最大10¹⁴Ωまで測定できる機器を使用することが規定されています。
試験中や試験直後の測定は、次の点に注意します。
乾燥した状態で測定してしまうと、抵抗値が実際より高く見えるため、試料をチャンバーから取り出した直後は速やかに測定することが推奨されます。
抵抗-時間データは、対数スケールでプロットすると変化がわかりやすくなります。一般的な挙動は以下のとおりです。
通常は1×108Ωを短絡判定の基準値とし、試験中は常時モニタリングまたは定期的槽内測定で信頼性の高い抵抗値データを取得します。
複数チャネルで試験を実施する場合は、統計的な視点からの評価が重要です。たとえば、「10試料中5試料が500時間以内に106Ω以下へ低下した」といった形で、各チャネルの故障時刻を集計し、全体傾向を把握します。
このように、絶縁抵抗データは「閾値の達成状況」と「時間の分布」という2つの軸で評価することが求められます。
リークタッチとは、デンドライトが成長中に導体間を一瞬だけ橋渡しをして、その直後に焼き切れて導通が断たれる現象です。
リークタッチ現象はマイグレーション故障の前兆とも言える現象であり、「見逃してはならない初期兆候」です。一瞬でも導通した履歴がある場合、製品の長期信頼性に与える影響を考慮し、場合によっては設計や材料の見直しを検討します。
逆にリークタッチが全く発生せず安定して高抵抗を維持した試料は、非常に余裕度の高い(マイグレーション耐性の高い)状態であると判断できます。
マイグレーションの進行初期は、細く未成熟なデンドライトが両電極に達して一時的に短絡を引き起こします。しかし、進行初期のデンドライトは非常に細く脆いため、電流が流れた瞬間にジュール熱(電流による発熱)で焼き切れてしまうのです。導通は瞬時に断たれ、低下していたはずの絶縁抵抗が高抵抗状態へと回復します。
その後も同じ環境条件(温湿度・電圧)が維持されると、再びデンドライトが成長し、短絡→焼断→絶縁回復というサイクルを繰り返すことになります。
こうした過程を経て、デンドライトが徐々に太く、電流に耐えられる構造へと成長していくと、最終的には焼き切れることのない導通経路が電極間に形成されます。この状態が、いわゆるマイグレーション破壊(恒久短絡)です。
リークタッチはごく短時間(ms〜µs)で起こるため、連続測定でなければ見逃されるリスクがあります。実際、間欠測定の試験では急激な抵抗低下を検出できず、故障発生のタイミングを正確に把握できなかったという報告もあります。このため、In-situモニタリングや高速サンプリングによる連続記録が不可欠です。近年では、同時多点・高速サンプリング技術の進展により、リークタッチの詳細な挙動まで記録できる環境が整いつつあります。
「瞬間短絡」と「自己消滅」を繰り返すリークタッチ現象は、抵抗–時間グラフ上ではディップ(鋭い谷)として現れます。また、電流値でも瞬間的なスパイク(過渡電流)が繰り返し現れるという特徴があります。
このようなデータを取得した場合には、オシロスコープ等で波形を確認し、試験後に顕微鏡で微細な焦げ跡(一瞬短絡した痕跡)がないか観察することで、より確実な判定が可能です。
物理的・化学的観察は、マイグレーションによる絶縁劣化が起きた直接的な証拠です。光学顕微鏡やSEM(走査電子顕微鏡)での確認や、EDX(エネルギー分散型X線分光法)といった解析手法を組み合わせることで、マイグレーションによる劣化箇所の視覚的確認から元素組成の特定まで、一貫した解析ができます。
ここでは、代表的な観察・元素分析の手法について解説します。
肉眼では確認しにくい微小なデンドライトでも、光学顕微鏡(実体顕微鏡)による拡大観察で視認可能です。光学顕微鏡の拡大率は数十倍程度ですが、細かく見えすぎないぶん基板全体を広く観察でき、どの回路で不良が起きたかを特定するための初期観察に適しています。
SEM(走査電子顕微鏡)は、光学では見えない微小な結晶粒や成長形態を鮮明に捉えるため、より高倍率でデンドライトの微細構造を観察する際に有効です。したがって、SEM像ではデンドライトの微細構造や成長の起点・方向を詳細に観察できます。一般的に、デンドライトは陽極側(金属が溶出する側)から陰極側へ樹枝状に伸びるため、両電極を観察することでどこからデンドライトが成長しはじめたかわかります。ソルダーレジストの損傷や腐食を高倍率で観察することで、電解液がレジスト下に回り込んでいないかといったチェックも可能です。
エネルギー分散型X線分析(EDX)でデンドライトの元素分析を調べることは、マイグレーション現象の原因を解明する上で非常に有効な手法です。析出物に含まれる元素が配線材料と一致すれば、その金属がマイグレーションによって移動したことを証明できます。環境由来の不純物(レジストの難燃剤由来のバリウムや、フラックス由来の残留物など)が含まれていれば、腐食を促進する要因の特定にもつながります。
対象物に合わせて選べる
マイグレーション試験受託会社
おすすめ2社を紹介
ここでは、エスペックによる「結露サイクル試験を用いたマイグレーションの評価」試験の事例を通じて、測定方法や結果解析のポイントを解説します。
「結露サイクル試験」では、DC5Vが印加された試料を10サイクル毎に試料の途中抜き出しを行い、外観観察を実施しました。
| 温度サイクル | それぞれの保持時間は20分間
|
|---|---|
| 湿度 | 高温側の湿度は90%RHに設定 |
| 試験サイクル | 80サイクル |
| 試料 |
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| バイアス | 試験中、試料にDC5Vの電圧が印加されました。 |
※参照元:ESPEC技術情報[PDF](https://www.test-navi.com/jp/report/cate/09/tech_content_no18/j_47.pdf)
電圧は、マイグレーション評価にはDC5Vを、結露量の相対測定にはAC5Vを印加しました。DC印加により、導体間に発生するデンドライト成長と絶縁抵抗の変化を継続的にモニタリングしています。
設定温度域の異なる3条件(5~25℃、15~35℃、25~45℃、いずれも90%RHかつ各20分保持)における累積故障率を比較したところ、最も早く故障が生じたのが25~45℃の条件、次いで15~35℃、最も遅かったのが5~25℃でした。つまり、温度が高いほどマイグレーションが生じる速度も加速し、より早く故障する傾向があるということです。
また、結露があっても、温度が低ければマイグレーションの進行はゆるやかでした。これらの計測データは、マイグレーションの発生速度が「ピーク時の結露量」に強く影響されることも示しています。高温下では飽和水蒸気量が増えるため、同じ温度差でも高温域では結露が多くなりやすいためだと考えられます。
数値データだけでは把握できないマイグレーションのメカニズム解明に直結する情報として、視覚的・定量的な解析は極めて有効です。試験後の試料については、実体顕微鏡やSEMによる観察、およびEDXによる元素同定を実施し、マイグレーションの発生を構造的・定量的に解析しました。
実体顕微鏡観察では、導体間の細い異物付着や樹枝状の析出物(デンドライト)を確認。SEM観察では、マイグレーションが始まる微小な起点や金属析出の様子を捉えました。
EDX分析では、デンドライトや表面残渣に含まれる元素組成を定量的に特定することで、マイグレーションの直接的な原因を明らかにしました。たとえば、洗浄のみの試料からは銅(Cu)と炭素(C)を検出。基板表面に付着した有機汚染などがイオンの移動を助長したと推定されます。また、はんだ処理を施した試料ではスズ(Sn)、鉛(Pb)、銅(Cu)が検出され、はんだとフラックスの界面からの金属溶出がマイグレーションの原因であることが裏付けられました。
温度・湿度・電圧の設定条件とマイグレーションの進行には明確な相関が確認されており、高温高湿環境下で直流バイアスを印加する試験は、電子機器におけるマイグレーションによる絶縁劣化の評価に適しています。信頼性の高い試験を行うには、評価対象の使用環境を踏まえたうえで試験条件を設計し、測定結果の変化を正確に捉える常時計測や、観察・元素分析などの多角的な解析を組み合わせることが有効です。
マイグレーション評価の精度を高めるには、試験条件や解析方法を適切に設計するだけでなく、それらを安定して再現・記録できる装置を選ぶことも重要です。特に、絶縁抵抗の急激な低下やリークタッチのような一時的な異常は、測定機器や試験槽の性能によって検出できるかどうかが変わります。
そのため、マイグレーション試験機を選ぶ際は、単に「試験できるか」だけでなく、リアルタイム測定への対応、温湿度の安定性、微小電流の検出性能、印加電圧の範囲、複数チャンネル測定の可否といった観点から比較することが大切です。
リークタッチのような短時間の抵抗低下を捉えるには、試験中の絶縁抵抗を連続的に記録できる測定機能が必要です。測定間隔が長い装置では、一瞬だけ発生した導通異常を見逃す可能性があります。
また、長時間試験では温湿度変化や測定系のドリフトによって、データにばらつきが生じることがあります。そのため、リアルタイムでのモニタリングに加え、測定値を安定して記録できる補正機能やデータロギング機能の有無も確認しておくとよいでしょう。
マイグレーションは温度や湿度の影響を強く受けるため、試験槽には設定した温湿度を安定して維持する性能が求められます。特に85℃/85%RHのような高温高湿条件では、槽内の温湿度分布や立ち上がり時間、安定性が試験結果に影響します。
温湿度のばらつきが大きいと、サンプルごとの劣化速度に差が出たり、結露の発生条件が変わったりする可能性があります。試験槽を選ぶ際は、対応温湿度範囲だけでなく、制御精度や槽内分布、試料数を入れた状態での安定性も比較するとよいでしょう。
マイグレーション評価では、絶縁抵抗のわずかな変化を読み取る必要があります。高抵抗状態では流れる電流が非常に小さいため、微小電流を安定して検出できる測定性能が重要です。
たとえば、108Ωを合否判定の目安とする場合でも、劣化の初期兆候を追うには、それより高い抵抗領域の変化を安定して測定できることが望まれます。装置選定時には、測定可能な抵抗範囲、電流分解能、ノイズ対策、シールドやガード機能の有無を確認することが大切です。
マイグレーション試験では、材料や表面状態によって結果にばらつきが出るため、複数のサンプルを同時に評価することが重要です。複数チャンネルを同時に測定できる装置であれば、同一条件下で複数試料の抵抗変化を比較でき、評価データの信頼性を高めやすくなります。
また、多点測定に対応している装置は、試験効率の面でも有利です。受託試験や量産前評価など、複数条件・複数サンプルを扱う場合は、対応チャンネル数や同時測定時のサンプリング性能も確認しておくとよいでしょう。
印加電圧は、マイグレーションの発生速度や故障モードに関わる重要な条件です。狭ピッチ基板や微小電子部品の評価では、数V〜数十V程度の低電圧を細かく制御できることが求められる一方、EV部品やパワーデバイスの評価では、より高い電圧領域に対応した装置が必要になる場合があります。
必要以上に高い電圧をかけると、実使用環境とは異なる劣化や絶縁破壊を招く可能性があります。反対に、評価対象に対して印加電圧が不足していると、試験時間が長くなったり、想定すべき劣化を十分に再現できなかったりします。そのため、装置選定では、評価対象に合った印加電圧範囲と制御精度を確認することが重要です。
「自社の製品にとって、どんな試験をどんな装置で実施すればよいのか?」という具体的な検討をされていませんか?
マイグレーション試験では、試験対象によって求められる印加電圧の条件が大きく異なります。 たとえば、狭ピッチのプリント基板や微小電子部品などでは数V~数十Vの繊細な電圧制御が求められる一方で、EV部品などのパワーデバイスでは数千Vの高電圧に対応した耐圧評価をする必要があります。
このような背景から、当サイトでは試験機の選定において「印加電圧の大きさ」を判断軸としてマイグレーション試験と試験槽をご紹介しています。 具体的には、低電圧試験に強みを持つ、IMVの試験機と平山製作所の試験槽(HAST装置)の組み合わせ、また高電圧に強みを持つESPECの試験機と試験槽(HAST装置)を比較し、それぞれの特長や活用シーンを整理しています。
現在、マイグレーション試験機の導入・検討をされている方は、ぜひ当サイトのトップページ(下記リンク先)をチェックしてみてください。なお各社は受託試験も行っているため、導入前にまずは受託試験サービスを試してから検討することも可能です。
最適なマイグレーション試験機・試験槽を見つけるヒントに!
印加電圧の違いによって求められる試験環境は大きく異なります。ここでは、対象物に合った試験を強みとする受託試験会社を、2社ピックアップしてご紹介します。

引用元:IMV公式サイト
https://www.landingpage-synergy.com/k4yeiagc/

| 印加電圧設定 | 1.0V~250V |
|---|---|
| 試験所数 | 日本国内7・海外3拠点 |

引用元:ESPEC公式サイト
https://www.espec.co.jp/products/measure-semicon/25kv/

| 印加電圧設定 | 2.5kV |
|---|---|
| 試験所数 | 国内6拠点 |