半導体パッケージが抱えるリスクは年々複雑化しており、長期信頼性を確保するためには、事前にリスクを把握し対策を講じることが重要です。中でも、湿度や電圧ストレスが原因で発生する(イオン)マイグレーションのリスクは、見落とされがちな課題です。
この記事では、半導体パッケージにみられるマイグレーションの発生プロセスを整理するとともに、半導体パッケージにおけるマイグレーション試験の実例を紹介します。
半導体パッケージにおけるマイグレーションとは、主にパッケージ外部のIC端子間で金属めっき(特に銀:Ag)が腐食し、金属イオンとなって移動・再析出する現象です。この現象は、銀めっきが外部に露出していると特に発生しやすくなります。
めっきに使われる銀は硫黄化合物ガス(SO2など)に対して非常に腐食されやすく、イオン化しやすい特性を持っています。銀の表面に水膜がある状態で電圧が印加されると、表面の銀原子がイオンに変わって溶け出し、電位差に従って移動します。
銀イオンは陰極側で電子を取り込み、金属銀に還元され、再び銀が表面に現れます。これを繰り返してデンドライトが十分に成長すると、端子間に金属橋が形成され、短絡に至る可能性が高まります。
試験事例として、大阪大学接合科学研究所の「2021年度 次世代パワーデバイス用焼結型接合材料のマイグレーション性評価に関する研究」をご紹介します。本研究は次世代パワーデバイスに用いられる焼結型接合材料のマイグレーション性を評価し、耐性向上策の提言を目的に実施されました。
※参照元:大阪大学接合科学研究所[PDF](https://www.jwri.osaka-u.ac.jp/~dpt3/images/news/report.pdf)
次世代パワーデバイスは、カーボンニュートラル実現を背景に小型化・高温動作・高電流化が進展する中で、接合部の信頼性が大きな課題となっています。Agナノ粒子を利用した焼結接合材料は高耐熱性が期待されているものの、マイグレーションによる金属移動が断線・不良の原因となるリスクが懸念されています。
本研究では、室温(20℃)および昇温環境(100℃)で一定の電流密度(6.7×10^3 A/cm^2)を印加し、0~120時間の試験を実施しました。試験サンプルに櫛形パターンを用いて、250℃で20分加熱する条件としました。
20℃および100℃の条件下で、電流密度6.7×10^3 A/cm^2に一定印加した結果、72時間後にアノード側に明らかな突起(ヒロック)が観察され、マイグレーション現象が確認されました。96時間および120時間経過時にはヒロックの成長が進み、マイグレーションによる劣化が進行していることが示されました。
120時間後には、カソード側に大きな欠陥(ボイド)が発生。ただし、試験部(0.1 mm幅)の破断までは至らなかったため、接合材料の耐久性は一定の範囲内で維持されることが示唆されました。
半導体パッケージにおけるマイグレーションを防ぐためには、複数の観点から対策を講じることが重要です。設計段階では端子間に十分なクリアランスを確保し、封止構造の最適化を行います。耐湿性・耐腐食性に優れた材料や表面処理の採用が効果的です。
製造工程においては、クリーンな環境を維持し、洗浄と乾燥を徹底することで、表面汚染や残留物による劣化リスクを抑える必要があります。製品化を行う前に定量的な評価を行うことで、実際の劣化挙動を早期に把握することが可能です。
設計や製造工程の最適化には、半導体パッケージの絶縁信頼性や劣化モードを精密に評価できるマイグレーション試験が有用です。評価結果をもとに設計や材料の見直しを行うことは、パッケージ全体の長期信頼性を高める重要なアプローチといえます。
対象物に合わせて選べる
マイグレーション試験受託会社
おすすめ2社を紹介
マイグレーションは、半導体パッケージのような高密度・高性能化が進む部品において、見落とされがちな故障要因です。特に外部環境の湿度や汚染、電界ストレスの影響を受けやすいIC端子部や接合部では、封止設計や材料の選定だけでなく、実使用を想定した環境下での評価試験が重要です。
ところで「自社の製品にとって、どんな試験をどんな装置で実施すればよいのか?」という具体的な検討をされていませんか?
マイグレーション試験では、試験対象によって求められる印加電圧の条件が大きく異なります。 たとえば、狭ピッチのプリント基板や微小電子部品などでは数V~数十Vの繊細な電圧制御が求められる一方で、EV部品などのパワーデバイスでは数千Vの高電圧に対応した耐圧評価をする必要があります。
このような背景から、当サイトでは試験機の選定において「印加電圧の大きさ」を判断軸としてマイグレーション試験と試験槽をご紹介しています。 具体的には、低電圧試験に強みを持つ、IMVの試験機と平山製作所の試験槽(HAST装置)の組み合わせ、また高電圧に強みを持つESPECの試験機と試験槽(HAST装置)を比較し、それぞれの特長や活用シーンを整理しています。
現在、マイグレーション試験機の導入・検討をされている方は、ぜひ当サイトのトップページ(下記リンク先)をチェックしてみてください。なお各社は受託試験も行っているため、導入前にまずは受託試験サービスを試してから検討することも可能です。
最適なマイグレーション試験機・試験槽を見つけるヒントに!
印加電圧の違いによって求められる試験環境は大きく異なります。ここでは、対象物に合った試験を強みとする受託試験会社を、2社ピックアップしてご紹介します。

引用元:IMV公式サイト
https://www.landingpage-synergy.com/k4yeiagc/

| 印加電圧設定 | 1.0V~250V |
|---|---|
| 試験所数 | 日本国内7・海外3拠点 |

引用元:ESPEC公式サイト
https://www.espec.co.jp/products/measure-semicon/25kv/

| 印加電圧設定 | 2.5kV |
|---|---|
| 試験所数 | 国内6拠点 |