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HASTとPCTの違いを比較|選定ポイントも解説

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信頼性評価の代表的な手法として、「HAST」と「PCT」があります。ここでは、これら2つの加速試験の目的試験条件の違い使い分けのポイントについて解説します。

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HASTとPCTの違い

HASTとPCTは、どちらも高温・高湿・加圧環境を再現し、製品の信頼性を短期間で評価するための加速試験です。HASTもPCTも高温高湿+加圧という加速的な環境を作り出しますが、湿度の制御方法や評価目的が異なるため、適用される場面には明確な違いがあります。

HASTは高温・高湿条件のもとで通電バイアスをかけ、耐湿性や耐電圧性能を評価する試験です。主に、半導体パッケージや実装基板において劣化モード(腐食・絶縁破壊など)を早期に顕在化させたい場合に使用されます。試験方法はJEDEC規格(JESD22-A110)やIEC 60068-2-66といった国際規格で定義されており、通電状態での評価を基本としています。

PCTは、飽和蒸気環境(ほぼ100%RH)で加圧し、高温条件(121℃~130℃など)下で部品内部へ水分を強制浸透させる試験です。はんだ付け部の強度評価、樹脂封止ICの耐湿性、樹脂クラックの発生評価など、水分の吸湿による信頼性劣化を評価する目的で使われます。試験方法はJIS C 60068-2-66やJEDEC JESD22-A102などの規格に基づいており、多くの場合、無通電のまま加速環境下で試験を行うのが特徴です。

HASTの特徴と基本条件

HASTは、耐湿信頼性を短時間で評価するための加速試験です。バイアス(通電)を加えた状態で実施することが前提となっており、耐電圧性と耐湿性の両方を総合的に評価できる点が大きな特徴です。

HASTの概要

HASTは、部品を高温・高湿・加圧環境にさらす試験方法です。

従来の定常湿熱試験(85℃/85%RH)では数百〜千時間かけて評価を行う一方で、HASTでは110〜130℃の高温・約85%RHの高湿度環境を加圧下で再現することで、わずか24〜96時間程度で同様の劣化モードを再現できます。

HASTはさまざまな電子部品に対して実施されており、主な評価対象としては、 プラスチック封止タイプの半導体パッケージ(IC)が挙げられます。ICは樹脂内部への水分の侵入や絶縁劣化が問題となるため、湿度ストレスに対する信頼性評価が重要です。また、パワーモジュールで使用される基板コンデンサなどの受動部品など、構造的に水分浸透リスクのある部品全般の評価にも用いられます。

温度・湿度・圧力の条件と
試験の仕組み

HASTは、温度・湿度・圧力を精密に制御した環境のもとで行われます。

項目 代表的な条件 説明
温度 110〜130℃ 通常は121℃前後が多く使用される。高温ほど劣化反応が加速される。
湿度 約85%RH(不飽和蒸気) 飽和ではなくわずかに空気を含ませた環境。結露を抑えつつ湿度ストレスを与える。
圧力 約0.2〜0.4 MPa(ゲージ圧) 加圧により封止樹脂や基板内部への水分浸透を促進。評価時間の短縮に寄与。
試験時間 通常24〜96時間 加速試験としては短時間だが、定常試験の数百〜1000時間に相当する評価が可能。

この環境下でデバイスに定格電圧(バイアス)を印加し、リーク電流や絶縁抵抗の変化、動作不良などを連続的に監視します。

HASTが向いている用途とは?

HASTは主にバイアスをかけた通電状態での評価に用いられるため、以下のような用途で採用されます。

樹脂封止ICの耐湿性評価

湿気の侵入によってリードフレームが腐食したり、金属配線にマイグレーションが発生したりする現象を、短時間で評価する目的に適しています。

通電下での腐食・絶縁劣化の確認

バイアス(通電)を印加して試験を行うことで実使用環境に近いストレスを再現でき、腐食や絶縁劣化の進行を現実的に捉えることが可能です。

長期寿命の予測

85℃/85%RHの定常試験に比べて高い加速効果が得られるため、設計段階での信頼性マージンの確認や、製品寿命の予測に効果的です。

以下ページでは、HAST試験について詳しく解説しています。 ぜひ参考にしてください。

HAST試験について詳しく見る

PCT試験の特徴と基本条件

PCTは、樹脂材料の耐水性パッケージ内部の構造健全性を評価する目的で用いられます。試験は通電を伴わない(無通電)条件で行われるのが一般的です。

PCTの概要

PCTは、飽和蒸気環境において高圧・高温・高湿度(おおむね100%RHに近い条件)を与える加速試験です。評価対象となるのは、樹脂封止型のIC電子モジュールプリント基板全般、およびコーティング材を含む各種樹脂材料です。封止樹脂の膨張、クラックの発生、リフロー工程での「ポップコーン故障」といった現象の予測に有効とされています。

飽和蒸気環境下での評価とは?

チャンバー内を飽和蒸気状態(相対湿度ほぼ100%)に設定し、121〜130℃程度まで加熱・加圧することで、飽和蒸気環境下での評価を行えます。水蒸気が飽和しているため部品表面には大量の水分が付着し、短時間で樹脂内部や基板深部へ浸透します。典型的な条件は、121℃・2気圧(約0.2 MPaのゲージ圧)での連続曝露です。

この試験で評価される主な対象は、封止樹脂の吸湿挙動やクラック、剥離の有無などの物理的・化学的劣化現象です。腐食や電気的特性よりも、水分の侵入に対する構造的な耐性を重点的に確認したい場合に適しています。

PCTが向いている評価対象とは?

PCTでは水分がもたらす影響を試験できるため、以下のような材料・構造を評価する際に有効です。

樹脂やプラスチック封止された部品

水分の侵入によって発生する膨張やクラックなどの劣化現象を短期間で再現・観察できるため、ICの封止樹脂・LEDパッケージなどの評価に活用されます。

樹脂コーティング材・接着剤などの吸湿性評価

吸湿による物性の変化や密着性の低下を早期に検出できるため、一定の厚みをもつ封止材料が飽和蒸気下でどのように変質するかを確認する目的で使えます。

ポップコーン現象の予防

リフロー工程の前に部品が吸湿していると、急激な加熱で内部水分が膨張・破裂する「ポップコーン現象」が発生するおそれがあります。そのリスクを事前に確認するために、PCTで吸湿耐性を評価するケースもあります。

HASTとPCTの違いを比較|
選定ポイントも解説

ここでは、HASTとPCTの違いを目的・対象・評価項目ごとに比較しながら、どちらを選ぶべきかの判断ポイントを解説します。

試験環境(飽和/非飽和)、
温度、圧力の違い

HASTとPCTの共通点は、いずれも高温・高湿・加圧という条件を備えていることです。高温・高湿・加圧と一言でいっても、詳細は以下のように異なるため、それぞれの特性を踏まえた使い分けが重要です。

項目 HAST PCT
湿度環境 不飽和蒸気 (85%RH前後) 飽和蒸気 (100%RHに近い)
温度範囲 110~130°C程度 121~130°C程度
圧力 0.2~0.4 MPa程度 (加圧・不飽和状態) 1~2 atm上乗せ (加圧・飽和状態)
バイアス印加 通電試験が中心 (JEDEC JESD22-A110/A118など) 基本は無通電

評価対象や目的別の使い分け方

HASTは、不飽和の高温・高湿環境下で通電バイアスを加えながら、電子部品の劣化を短時間で再現する試験です。主に、絶縁破壊や腐食といった電気的故障モードの早期顕在化を目的として実施されます。

一方で、PCTは、飽和蒸気環境での水分浸透を加速させ、部品や材料の吸湿耐性を評価することを主な目的としています。とくに、封止樹脂のクラックや、リフロー時のポップコーン現象など、吸湿による物理的な破壊現象の予測に有効です。

項目 HAST(高加速寿命試験) PCT(プレッシャークッカー試験)
目的 通電状態での腐食や絶縁劣化の加速再現。部品や基板の電気的耐久性を短時間で評価 飽和水蒸気下での吸湿・膨張・クラック・剥離などの物理的破壊モードを加速評価
主な対象 半導体パッケージ、実装基板 樹脂封止部品、パッケージ材料、フラックス残渣など
用途例 JEDEC規格に基づくICの耐湿寿命認定、電気的信頼性のスクリーニング ポップコーン現象の予防評価、樹脂封止部品の吸湿耐性確認

電圧印加の有無による評価の違い

HASTでは、動作電圧または定格電圧を印加した状態(バイアス付き)で評価を行うことで、電気化学的腐食電位差による絶縁劣化といった電気的故障モードを、短時間で再現・評価することが可能です。

一方、PCTでは、無通電またはごく低い電圧で試験が実施されるのが一般的です。この試験では、主に水分の浸透によって生じる樹脂のクラック、剥離、膨張といった物理的な破壊の評価が中心となります。

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HASTとPCT、どちらを選ぶべき?

HASTとPCTは、どちらも高温・高湿環境を利用して部品や材料の劣化を加速させる試験ですが、確認できる不具合の種類は異なります。試験を選ぶ際は、単に条件の厳しさだけで判断するのではなく、何を確認したいのかを明確にすることが重要です。

特に、吸湿による材料劣化を見たいのか、通電状態での電気的な劣化を見たいのか、あるいは電極間のマイグレーションリスクまで確認したいのかによって、適した試験方法は変わります。ここでは、PCTで足りるケース、HASTが必要なケース、マイグレーション試験まで検討すべきケースを整理します。

PCTで足りるケース

PCTで足りるのは、主に水分の浸入によって材料や構造にどのような変化が起きるかを確認したい場合です。たとえば、封止樹脂や接着剤、コーティング材、パッケージ材料などの耐湿性を見たいケースでは、PCTが選択肢になります。

PCTでは、飽和蒸気環境によって水分を強制的に浸透させ、クラック、剥離、膨張、ポップコーン現象などの発生を確認します。通電時のリーク電流や絶縁破壊まで評価対象にしない場合は、まずPCTで材料面・構造面の耐湿性を確認する方法が考えられます。

HASTが必要なケース

HASTが必要になるのは、高温・高湿環境に加えて、電圧や通電状態が不具合の発生に関係する場合です。半導体パッケージ、IC、実装基板、パワーモジュールなど、実使用時に電気が流れる部品では、湿気による電気的な劣化を確認する必要があります。

HASTでは、通電バイアスをかけながら試験を行うことで、腐食、絶縁劣化、リーク電流、絶縁破壊などを加速的に評価できます。水分による材料劣化だけでなく、通電状態で電気的な不具合が起きないかを確認したい場合は、PCTではなくHASTを検討する必要があります。

マイグレーション試験まで必要なケース

マイグレーション試験まで必要になるのは、基板上の電極間や配線間、端子間で、イオンマイグレーションによる絶縁抵抗低下や短絡リスクを確認したい場合です。特に、狭ピッチ配線や高密度実装基板では、わずかな汚染や残渣が不具合につながる可能性があります。

HASTによって高温・高湿・通電下での劣化は確認できますが、電極間に導電性の経路が形成されるか、マイグレーションがどのように進行するかを詳しく見たい場合は、専用の評価が必要です。絶縁抵抗の低下やショートの原因としてマイグレーションが疑われる場合は、マイグレーション試験まで検討しましょう。

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多チャネル対応

PC1台で最大256chまで拡張可能で、複数サンプルの一括試験による効率化と比較評価が容易になります。

開発期間の大幅短縮を実現

たとえば、通常1,000時間かかる耐久評価を 500時間以下に短縮可能。開発スピードを加 速させ、思わぬ故障も未然に防ぎます。

また平山製作所のHAST装置の高絶縁抵抗を 測定するための対策(特殊カバーやノイズ 対策)が、IMVの試験機が持つ高精度な測定 性能を最大限に活かし、 マイグレーション による微小なリーク電流も正確に検出できるようになります。

※下記図は一例です。

耐久評価時間の大幅短縮
他社製品との比較
項目 当社
IMV(+平山製HAST)
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電圧精度 印加電圧の設定後、測定時にリアルタイム補正 印加電圧の設定のみ
湿度制御 外部生成→内部供給で安定 (試験槽外に蒸気発生層があるため温度湿度分布が良い) 試験槽内に装置がある場合、ばらつき大
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多チャンネル対応 PC1台あたり最大256ch モデルによる制限

選定のヒントと次のステップ

HASTとPCTの違いを理解することで、どの試験を使うべきかという判断の精度は格段に上がります。しかし、実際の評価においては「どの製品にどちらが適しているか」「どの装置を使えば適切な試験条件を満たせるのか」といった機種選定の視点が重要になります。
当サイトのトップページでは、印加電圧の大きさや用途に応じてマイグレーション試験機を紹介。 信頼性評価の設計段階で考慮すべき試験方式や機種の特徴、選定時のチェックポイントもわかりやすく整理しています。

印加電圧の大きさ別
マイグレーション試験機2選

マイグレーション試験機は印加電圧で選ぶ|
おすすめ2選と選定の考え方

HASTとPCTの違いを理解することで、どの試験を使うべきかという判断の精度は格段に上がります。あわせて当然ですが、実際の評価においては「どの製品にどちらが適しているか」「どの装置を使えば適切な試験条件を満たせるのか」といった機種選定も重要です。

「自社の製品にとって、どんな試験をどんな装置で実施すればよいのか?」という具体的な検討をされていませんか?

マイグレーション試験では、試験対象によって求められる印加電圧の条件が大きく異なります。 たとえば、狭ピッチのプリント基板や微小電子部品などでは数V~数十Vの繊細な電圧制御が求められる一方で、EV部品などのパワーデバイスでは数千Vの高電圧に対応した耐圧評価をする必要があります。

このような背景から、当サイトでは試験機の選定において「印加電圧の大きさ」を判断軸としてマイグレーション試験と試験槽をご紹介しています。 具体的には、低電圧試験に強みを持つ、IMVの試験機と平山製作所の試験槽(HAST装置)の組み合わせ、また高電圧に強みを持つESPECの試験機と試験槽(HAST装置)を比較し、それぞれの特長や活用シーンを整理しています。

現在、マイグレーション試験機の導入・検討をされている方は、ぜひ当サイトのトップページ(下記リンク先)をチェックしてみてください。なお各社は受託試験も行っているため、導入前にまずは受託試験サービスを試してから検討することも可能です。

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印加電圧の大きさ別
マイグレーション試験機2選

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印加電圧の違いによって求められる試験環境は大きく異なります。ここでは、対象物に合った試験を強みとする受託試験会社を、2社ピックアップしてご紹介します。

狭ピッチのプリント基板
絶縁フィルム・コーティング材
はんだ
めっき・フラックスの残渣
微細パターンのガラス
など
IMV
絶縁劣化評価試験器(IMV)

引用元:IMV公式サイト
https://www.landingpage-synergy.com/k4yeiagc/

絶縁劣化評価試験システム
IMV
引用元:IMV公式サイト
https://www.landingpage-synergy.com/k4yeiagc/
                           
印加電圧設定 1.0V~250V
試験所数 日本国内7・海外3拠点
誤差の影響が大きい低電圧でも、
正確な試験が可能
リアルタイムで測定物の電圧を検知・自動補正し、意図した通りの負荷を実現。そのため信頼性の高い試験結果を提供可能。
湿度環境を試験室外で生成し供給する方式を採用。外部環境の影響を受けにくく、設定湿度で安定した試験が可能。
EV/HV車向けパワーデバイス(IGBT)
車載用ECU
高電圧センサ基板
ワイヤハーネス
端子
など
ESPEC
ESPEC

引用元:ESPEC公式サイト
https://www.espec.co.jp/products/measure-semicon/25kv/

高電圧絶縁抵抗評価システム
ESPEC
引用元:ESPEC公式サイト
https://www.espec.co.jp/products/measure-semicon/25kv/
                           
印加電圧設定 2.5kV
試験所数 国内6拠点
高電圧のオーバーシュートを抑え、
安全に試験可能
高電圧試験での絶縁破壊や誤判定を防ぐ「ストレス電圧制御機能」により、オーバーシュートを抑え、滑らかな電圧立ち上げで信頼性の高い結果を実現。
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