車載電子機器における(イオン)マイグレーションは、電子機器の性能低下や故障を引き起こす重要な問題です。この記事では、マイグレーションの発生要因とその過程、車載電子機器に対する試験の事例や、マイグレーション防止に有効な対策について解説します。
マイグレーションの要因として、「高温多湿環境」と「塩分暴露」が挙げられます。
車載電子機器は過酷な高温多湿環境にさらされています。エンジンルームは85℃以上の高温になるうえ、エアコン作動時には急激な温度変化によって結露が発生しやすい環境です。多湿環境では水分が電極間に入り込むリスクが高くなり、高温環境では化学反応が促進されやすいため、マイグレーションが急激に進行します。
また、塩分は導電性を高めるため、デンドライトの成長を加速させる原因のひとつです。沿岸部や融雪剤を使用する地域では、塩分(Cl-)が車内に付着することでマイグレーションが生じるケースもあります。また、はんだ付けの際に除去しきれなかったフラックス残渣が原因になることも珍しくありません。フラックス由来のイオンが絶縁膜を侵食することで、絶縁劣化を引き起こします。
車載電子機器におけるマイグレーション試験の主な事例と特徴について、検証対象や試験方法に焦点を当てて解説します。

ケミトックス社では、自動車向けプリント配線板に対してDC(直流電気)1,000V級の高電圧試験を実施しています。特にパワーデバイス搭載基板の評価では、高温多湿サイクル環境下での絶縁抵抗値推移を連続監視しました。2021年には1,000V対応装置を増強し、デンドライト成長による瞬間的ショートと焼き切れ現象を詳細に記録しています。
※参照元:ケミトックス信頼性評価技術レポート(Vol.1)[PDF](https://www.chemitox.co.jp/technical_data/6040-2)
EV・HEV・PHEVなどの電動車では、インバーター、コンバーター、バッテリー周辺部品、パワーデバイス搭載基板など、高電圧環境で使用される部品が増えています。これらの部品では、湿気や結露、イオン性残渣の影響により、絶縁劣化や短絡につながるマイグレーションリスクを高電圧条件下で評価することが重要です。
車載電子機器のマイグレーション試験では、温湿度条件だけでなく、試験対象に応じた印加電圧に対応できるかが重要な判断軸になります。微細な電子部品や狭ピッチ基板では数V~数十Vの低電圧評価が求められる一方、EV関連部品やパワーデバイス搭載基板では、数百Vから1,000V級の高電圧条件で評価するケースもあります。
マイグレーション試験機を選ぶ際は、自社の試験対象がどの電圧条件を必要とするのかを整理し、低電圧評価に強い装置か、高電圧評価まで対応できる装置かを確認することが大切です。当サイトでは、印加電圧の大きさ別にマイグレーション試験機を紹介しています。
車載電子機器に特有のマイグレーション対策として、以下の三点が挙げられます。
プリント基板や部品の表面を防湿材でコーティングすることで、湿気や結露による回路の劣化を防ぐ手法が広く採用されています。車載機器においては、全体を覆う塗布に加え、コスト削減や環境負荷の低減を目的として、必要な部分のみに防湿材を塗る局所塗布も行われています。
撥水処理を行ったコンデンサ(主にMLCC)を使用することで、結露による水滴の付着や電極間でのイオンの橋渡しを抑え、マイグレーションの発生を防止します。この対策は、温度や湿度の変化が大きい車載環境においては特に有効です。
フラックス残渣によるマイグレーションの発生を抑えるために、割れにくい特性を持つ耐クラック成分を含んだはんだペーストや、絶縁性が高くイオンの発生を抑えるハロゲンフリー・低イオン性のフラックスを使用します。
車載電子機器は結露、激しい温度変化、塩害など過酷な環境に置かれやすいため、多層的な対策が特に重視されています。車載用途においては、JASO規格に基づく結露サイクル試験や高温高湿下でのバイアス試験などを行い、設計段階で部品や基板のマイグレーションに対する耐性を評価することが有効です。実使用環境における信頼性を事前に確認することで、部品や基板の安全性を確保できます。
対象物に合わせて選べる
マイグレーション試験受託会社
おすすめ2社を紹介
マイグレーションは、車載電子機器のように過酷な環境下で使用される回路にとって、故障リスクを高める大きな要因です。設計段階での対策はもちろん重要ですが、それと同じくらい重要なのが、実使用環境を模した信頼性試験によって検証することです。
ところで「自社の製品にとって、どんな試験をどんな装置で実施すればよいのか?」という具体的な検討をされていませんか?
マイグレーション試験では、試験対象によって求められる印加電圧の条件が大きく異なります。 たとえば、狭ピッチのプリント基板や微小電子部品などでは数V~数十Vの繊細な電圧制御が求められる一方で、EV部品などのパワーデバイスでは数千Vの高電圧に対応した耐圧評価をする必要があります。
このような背景から、当サイトでは試験機の選定において「印加電圧の大きさ」を判断軸としてマイグレーション試験と試験槽をご紹介しています。 具体的には、低電圧試験に強みを持つ、IMVの試験機と平山製作所の試験槽(HAST装置)の組み合わせ、また高電圧に強みを持つESPECの試験機と試験槽(HAST装置)を比較し、それぞれの特長や活用シーンを整理しています。
現在、マイグレーション試験機の導入・検討をされている方は、ぜひ当サイトのトップページ(下記リンク先)をチェックしてみてください。なお各社は受託試験も行っているため、導入前にまずは受託試験サービスを試してから検討することも可能です。
最適なマイグレーション試験機・試験槽を見つけるヒントに!
印加電圧の違いによって求められる試験環境は大きく異なります。ここでは、対象物に合った試験を強みとする受託試験会社を、2社ピックアップしてご紹介します。

引用元:IMV公式サイト
https://www.landingpage-synergy.com/k4yeiagc/

| 印加電圧設定 | 1.0V~250V |
|---|---|
| 試験所数 | 日本国内7・海外3拠点 |

引用元:ESPEC公式サイト
https://www.espec.co.jp/products/measure-semicon/25kv/

| 印加電圧設定 | 2.5kV |
|---|---|
| 試験所数 | 国内6拠点 |