医療機器においては、わずかな電気的な劣化が大きなトラブルにつながることもあります。中でも「イオンマイグレーション」は、湿度や材料などの条件によって知らぬ間に進行しやすい現象のひとつ。この記事では、その仕組みや試験方法、防止策についてわかりやすくかみ砕いて解説します。
イオンマイグレーションとは、湿度や水分のある環境下において、次の2つの過程が連続して起きる現象を指します。
具体的には、
という現象です。
このようにして導体間に金属樹(デンドライト)と呼ばれる橋のような構造が形成されると、やがて絶縁破壊が発生。ショート(短絡)やリーク電流の原因となります。
プリント基板の微細化が進むなか、絶縁距離が縮まることで、この現象の発生頻度は増大中。トラブルを最小限に抑えるためには、信頼性評価の一環としてイオンマイグレーション試験が不可欠となっています。
医療機器は、人の生命に直接関わる機能を担う製品です。長期にわたり安定して動作することが前提条件となっているため、他の分野以上に高い信頼性が要求されることは言うまでもありません。
たとえば、ペースメーカーやインスリンポンプなどの埋め込み型医療機器では、万が一の誤作動が患者の健康や命に直結します。絶縁破壊やショートによる電気的不具合は、絶対に避けなければなりません。
これらの機器は、体内や高湿度環境など、マイグレーションが起きやすい条件下で長期間使用されることが多く、そのリスクは無視できません。そのため、製品設計や材料選定の段階から、イオンマイグレーションの発生リスクを再現・評価する試験の導入が進められています。
医療機器は、体内の高湿度環境や、滅菌時の高温処理など、過酷な条件下で使われる場面が少なくありません。こうした状況では、微量の水分が基板内部に入り込み、電圧がかかった状態で金属が移動しやすくなることがあります。結果として絶縁性が低下し、マイグレーションのリスクは高まります。
マイグレーションは、見えない場所でじわじわと進行する現象ですが、信頼性の高い医療機器という性格上、こうした「目に見えない変化」への対策が欠かせません。
マイグレーションのもうひとつの要因として、材料に含まれる成分やはんだ付け時に使われるフラックスの残留物があります。これらに含まれるイオン性物質は、湿度と電圧の条件下で金属イオンの移動を手助けする「供給源」となってしまうことがあります。これが供給源となると、絶縁層の性能が徐々に落ち、ショートや誤動作につながる危険性も。
つまり、材料の選定や製造後の洗浄工程ひとつで、マイグレーションの発生しやすさが変わってくるというわけです。
イオンマイグレーションの進行は通常ゆっくりですが、評価に多くの時間をかけられないケースもあるため、高温・高湿の条件下で短期間に現象を再現する「加速試験」が用いられます。
たとえば、高温高湿試験(85℃・85%RH)やHAST試験(高圧蒸気雰囲気下の試験)などが代表的です。これらは湿度や温度によって金属イオンの移動を促進させ、短時間でリスクを評価するのに適しています。
実使用環境を模した状態で、材料や構造がどの程度マイグレーションに耐えられるかを確認できるため、時間短縮と精度の両立を図るうえでも有効な手段といえるでしょう。
イオンマイグレーション試験を行う際には、IEC規格などの国際基準が参考にされることが一般的です。とくに医療機器では、電気的な安全性や長期間の信頼性といった観点で、規格に沿った評価が求められるケースが多くなっています。
試験結果を見るうえでは、単にショートの有無だけでなく、どのような条件下でどのくらいの時間動作したのか、絶縁抵抗値がどう変化したのかといった点も重視されます。
つまり、合否の判断だけではなく、製品の使用環境や目的に応じて、どの程度のリスクをどう読み解くかという視点が評価のポイントに含まれる、ということです。
イオンマイグレーションを防ぐには、湿度に強い材料を使うことが基本です。たとえば、耐湿性に優れた絶縁樹脂やパッシベーション膜(表面を保護する薄膜)を使えば、水分の侵入や金属イオンの移動を抑える効果が期待できるでしょう。
また、はんだや接着剤などの微細な部分にも、吸湿しにくい素材を選ぶことが大切です。製品の外側だけでなく、内部の部品レベルでも材料を見直すことで、長期間の安定動作につながります。
材料対策に加えて、回路の設計そのものにも工夫が求められます。たとえば、導体同士の距離を十分にあけることで、金属イオンが移動しにくい環境をつくることが基本的な対策のひとつです。
また、筐体を密閉構造にしたり、防湿剤を塗布したりすることで、湿気そのものを内部に入りにくくする工夫も有効です。こうした設計上の配慮は、目に見えない劣化を少しずつ遅らせる効果があるため、信頼性を重視する医療機器には欠かせない視点といえるでしょう。
対象物に合わせて選べる
マイグレーション試験受託会社
おすすめ2社を紹介
イオンマイグレーションは、目に見えない劣化を引き起こすリスク要因のひとつです。医療機器の信頼性を高めるには、材料や設計段階での対策が欠かせません。
具体的な試験機や試験方法については、下の「マイグレーション試験機2選」をご覧ください。
マイグレーションは、医療機器のように高い信頼性が要求される回路にとっても故障リスクを高める要因です。設計段階での対策はもちろん重要ですが、実使用環境を模した信頼性試験による検証も同じくらい重要です。
試験対象によって求められる印加電圧の条件は大きく異なります。たとえば、微細電子部品では数V~数十Vの繊細な電圧制御が必要となる一方、パワーデバイスでは数千Vの高電圧評価が欠かせません。
当サイトでは、低電圧試験に強みを持つIMVの試験機/平山製作所の試験槽(HAST装置)の組み合わせと、高電圧試験に強みを持つESPECの試験機/試験槽(HAST装置)を比較し、それぞれの特長や活用シーンを整理しています。
試験機導入・受託試験をご検討の方は、ぜひ下記リンクから詳細をご確認ください。
印加電圧の違いによって求められる試験環境は大きく異なります。ここでは、対象物に合った試験を強みとする受託試験会社を、2社ピックアップしてご紹介します。

引用元:IMV公式サイト
https://www.landingpage-synergy.com/k4yeiagc/

| 印加電圧設定 | 1.0V~250V |
|---|---|
| 試験所数 | 日本国内7・海外3拠点 |

引用元:ESPEC公式サイト
https://www.espec.co.jp/products/measure-semicon/25kv/

| 印加電圧設定 | 2.5kV |
|---|---|
| 試験所数 | 国内6拠点 |