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知っておくべきマイグレーション試験機の規格と基準

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マイグレーション試験機を選定する際のポイントとして、各種規格や基準を満たした試験ができるかどうかという点が挙げられます。この記事では、マイグレーション試験に関連する主な規格・基準について紹介します。

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マイグレーション試験の主な規格

マイグレーション試験は、国際規格日本国内規格業界標準と多数の基準が整備されています。ここでは主要なものを紹介します。

国際規格(IEC・ISO)

電子機器の信頼性評価では、国際規格に基づいた環境試験が行われます。IEC 60068シリーズはその代表です。イオンマイグレーションの評価には、一定の高温・高湿環境に長時間さらすIEC 60068-2-3や、HASTで加速試験を行うIEC 60068-2-66などの規格が使われています。

プリント基板の絶縁劣化評価に用いられているのは、IEC 61189シリーズです。IEC 61189-5-503:2017では、CAF(導電性陽極フィラメント)やデンドライトによる絶縁破壊の評価方法が定められています。ISO 9455-17では「コームパターン試験法(SIRおよびマイグレーション試験)」を実施し、ソルダーペーストやフラックス残渣によるマイグレーション耐性を評価します。

業界標準(IPC・JPCA・UL)

プリント基板業界では、IPC(米国電子回路協会)の試験法規格IPC-TM-650シリーズにイオンマイグレーション関連の試験が含まれています。例えばIPC-TM-650方法2.6.3系はフラックス残渣による表面絶縁抵抗(SIR)試験およびマイグレーション耐性試験を扱っており、長期間の高湿度下で通電したくし形パターン間の抵抗変化やデンドライト発生を評価します。

プリント配線板環境試験方法
(JPCA-ET01)

JPCA(日本電子回路工業会)は、高温・高湿度下で金属マイグレーションと絶縁劣化を評価する「プリント配線板環境試験方法 (JPCA-ET01)」を制定しています。このJPCA規格では試験用パターン(標準くし形パターンと微細ピッチパターン)の寸法や、試験条件(温度・湿度・印加電圧・試験時間など)が細かく規定されており、信頼性評価現場で広く活用されています。

UL(米国の安全規格機関)

UL(米国の安全規格機関)はイオンマイグレーションの試験方法を定めていませんが、製品安全の観点から間接的にマイグレーション対策(絶縁信頼性確保)の基準を設けています。例えば情報機器向け安全規格のUL-60950は、汚染度条件を踏まえた離隔を確保して短絡リスクを低減する指針を示しており、50V以下で1.2mm、100V以下で1.4mmといった最小クリープ距離(沿面距離)が定められています。

日本国内規格(JISなど)

JIS Z 3197「はんだ付用フラックス試験方法」で規定されているのは、フラックス残渣が基板上で引き起こす電気的劣化を調べる試験方法です。また、JIS Z 3284「ソルダーペースト試験方法」にも、プリント基板上のソルダーペースト残渣によるマイグレーション試験や、表面絶縁抵抗試験の実施手順が含まれています。

環境試験の分野で広く用いられているのは、IEC 60068シリーズに対応したJIS C 60068規格群です。代表的な規格として、以下の3つが挙げられます。

さらに、日本電子部品信頼性センター(IECQ-Japan)電子情報技術産業協会(JEITA)なども、電子部品・実装品の信頼性試験基準の中でマイグレーション耐性確認を求める場合があります。

マイグレーション試験で活用されるチェックリスト・ガイドライン

イオンマイグレーション試験を適切に実施・評価するため、チェックリストやガイドラインが整備されています。公式規格以外にも、試験前の確認事項や運用上の注意点をまとめた文書・ノウハウ集が業界団体等から提供されています。

JIEPガイドライン

エレクトロニクス実装学会(JIEP)は、改訂版「エレクトロケミカルマイグレーション評価方法」(2007年発行)というガイドブックを刊行しています。約100ページにわたる詳細な内容で、試験に用いる評価用パターン設計、試験条件の設定方法、測定手順、結果の判定基準、新しいIPC/IECの動向まで網羅した実務的な資料です。このようなガイドラインは、試験担当者にとって重要なチェックリストとして機能し、試験品質の確保やトラブルの予防に役立ちます。

民間企業のガイドライン

マイグレーション試験では、長時間にわたって高湿度環境下で通電を行うため、試験手順に関する注意事項をチェックリストとしてまとめて運用している企業もあります。なかでも、抵抗値の連続監視は重要な管理項目の一つです。

マイグレーションが進行すると絶縁抵抗は徐々に低下しますが、初期段階では一時的に絶縁抵抗が回復する現象(リークタッチ)が発生することもあります。そのため、チェックリストには以下のような項目が含まれることが一般的です。

また、試験後には基板表面を観察し、デンドライトの有無や形状を確認することを推奨する企業もあります。

簡易評価手法に関する指針

正式な規格試験以外にも、短時間で相対比較を行うための簡易試験法があります。代表例は、水滴法(水滴マイグレーション試験)ろ紙吸水法です。

水滴法では、清浄な蒸留水または脱イオン水の一滴をくし形電極間に垂らし、直流電圧を印加してデンドライト発生の有無と時間を観察します。

ろ紙法では絶縁基板上にろ紙を敷き、その上に電極を対向させて電圧印加し、ろ紙を通じて供給される水分下でのマイグレーション傾向を調べます。

これらの手法は規格化されたものではありませんが、材料間の相対的なマイグレーション発生のしやすさを短期間で評価するのに有効です。そのため、研究開発段階やフラックス選定時の社内ガイドラインとして利用されています。

判定基準の例

フラックスや基板材料の評価では、「試験後に絶縁抵抗が一定の基準値以上を維持し、かつデンドライトが観察されないこと」を合格基準とするケースが一般的です。

例えば、電気通信機器向けの指針では85℃/85%RH/直流100Vという条件下で1000時間通電した後でも、絶縁抵抗が10^7Ω(10MΩ)以上維持していることが求められます。あわせて、デンドライトやCAFによる短絡が発生していないことも判定条件のひとつです。この基準は、通信機器の信頼性ガイドラインとして知られるTelcordia GR-78(通信機器向け信頼性基準)の要件に由来しています。

業界別・用途別の試験標準

マイグレーション試験の要求や実施標準は、業界や製品用途によって重点が異なる場合があります。以下、主要な業界ごとの取り組みや標準について紹介します。

通信・サーバー機器業界

電話交換機やデータセンター機器など、長期間の信頼性が求められる通信分野では、Telcordia GR-78に準拠した評価基準に基づいて試験が行われています。

GR-78ガイドラインでは、プリント基板に対して85℃/85%RHの高温高湿環境下で、DC100Vを印加しながら1000時間保持する評価試験を実施します。終了時点でも絶縁抵抗が高い状態を維持していることが要求されており、合格の目安は10⁷Ω(10MΩ)以上の絶縁抵抗を確保することです。

このような長時間試験は、通信機器が想定寿命(例えば25年)で湿度ストレスにさらされてもマイグレーションによる故障が起こらないことを保証するためのものです。

自動車・輸送機器業界

車載電子機器は高温高湿環境や結露にさらされる可能性があり、しかも安全に直結するため、信頼性基準が厳格です。

AEC-Q200などの車載部品向け試験規格では、85℃/85%RHでの1000時間バイアス試験(いわゆる85/85試験)を採用し、短期間で長年分の湿度ストレスを与えて絶縁劣化の有無を確認します。この試験は自動車業界が電子部品の長期信頼性確保のために導入したもので、非常に過酷な条件であることから、湿度バイアス試験の中でも最も厳しい部類です。AEC-Q200ではこのような温湿度バイアス試験をパッシブ部品の認定試験に組み込み、試験後に性能劣化や絶縁不良がないことを確認するよう求めています。

民生機器

家電製品やスマートフォンなど、一般消費者向けの電子機器(民生機器)は、比較的穏やかな使用環境を想定して設計されています。しかし、小型化・高密度実装の進展によって基板上の配線間隔が狭くなっており、イオンマイグレーションのリスクが高まっています。

このため、民生用途であっても、IEC 60068-2-3(40℃/93%RHでの定常通電試験)や、IEC 60068-2-38(温湿度サイクル試験)といった国際規格に基づく信頼性評価が実施されます。

また、多くのメーカーでは、JPCA(日本電子回路工業会)やJIS規格を参考に、製品ごとの使用条件に応じた独自の評価基準や試験手順を設定し、マイグレーション耐性の確認を行っています。

家電製品やスマートフォンなどの一般消費者向け電子機器(いわゆる民生機器)は、使用環境が比較的穏やかです。しかし、民生機器では小型化・高密度実装が進展しており、基板上の配線間隔が狭くなることでイオンマイグレーションのリスクが高まっています。このため、民生用途であっても、IEC 60068-2-3(40℃/93%RHで数十日間通電)IEC 60068-2-38(温湿度サイクル試験)といった国際規格に基づく信頼性評価が実施されます。

半導体パッケージ

樹脂封止内部での電気的マイグレーション現象は稀ですが、パッケージ内部の配線やモールド樹脂中でCAFが発生するリスクは否定できません。そこで、JESD22-A101(高温高湿バイアス試験:THB試験)JESD22-A110(HAST試験)といった規格に従い、デバイスレベルでもマイグレーションによるトラブルが起こらないかを評価します。

宇宙航空分野

宇宙機器は、真空中で高電圧が印加されるという特殊な使用環境が想定されるため、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の内部標準では、IPC-J-STD-004(フラックス規格)に基づく通常の評価では捉えきれない絶縁劣化要因について、追加の試験実施を推奨しています。これは、フラックス中の腐食性残渣が予期せぬ絶縁低下を引き起こすリスクに備えるための措置です。

具体的な評価方法としては、以下のような手法が採用されています。

これらの手法は宇宙用電子機器の評価項目にも組み込まれており、現場での実運用が進んでいます。

対象物に合わせて選べる
マイグレーション試験受託会社
おすすめ2社を紹介

製品特性に応じた試験が
信頼性確保の鍵

マイグレーション試験は、電子機器の信頼性確保において重要な評価項目の一つです。業界別に見ると、通信機器では超長期間の耐湿試験が重視され、車載機器では85℃/85%RHという過酷な環境条件下での評価が求められるなど、それぞれの用途に応じた基準値や試験期間が設定されています。

マイグレーション試験の根本的な目的は、導電性フィラメントや樹枝状の金属析出物による短絡故障を未然に防ぐことにあります。イオンマイグレーションによるトラブルを未然に防ぎ、電子回路の長期安定動作を保証するためには、各種規格やガイドラインを活用し、製品特性に応じた試験計画を立てることが不可欠です。

マイグレーション試験機は印加電圧で選ぶ|
おすすめ2選と選定の考え方

マイグレーション試験に関する規格や基準とともに「自社の製品にとって、どんな試験をどんな装置で実施すればよいのか?」という具体的な検討もすすめているのではないでしょうか。

マイグレーション試験では、試験対象によって求められる印加電圧の条件が大きく異なります。 たとえば、狭ピッチのプリント基板や微小電子部品などでは数V~数十Vの繊細な電圧制御が求められる一方で、EV部品などのパワーデバイスでは数千Vの高電圧に対応した耐圧評価をする必要があります。

このような背景から、当サイトでは試験機の選定において「印加電圧の大きさ」を判断軸としてマイグレーション試験と試験槽をご紹介しています。 具体的には、低電圧試験に強みを持つ、IMVの試験機と平山製作所の試験槽(HAST装置)の組み合わせ、また高電圧に強みを持つESPECの試験機と試験槽(HAST装置)を比較し、それぞれの特長や活用シーンを整理しています。

現在、マイグレーション試験機の導入・検討をされている方は、ぜひ当サイトのトップページ(下記リンク先)をチェックしてみてください。なお各社は受託試験も行っているため、導入前にまずは受託試験サービスを試してから検討することも可能です。

最適なマイグレーション試験機・試験槽を見つけるヒントに!

印加電圧の大きさ別
マイグレーション試験機2選

対象物から選ぶ
マイグレーション試験を受託依頼できる
おすすめメーカー2選

印加電圧の違いによって求められる試験環境は大きく異なります。ここでは、対象物に合った試験を強みとする受託試験会社を、2社ピックアップしてご紹介します。

狭ピッチのプリント基板
絶縁フィルム・コーティング材
はんだ
めっき・フラックスの残渣
微細パターンのガラス
など
IMV
絶縁劣化評価試験器(IMV)

引用元:IMV公式サイト
https://www.landingpage-synergy.com/k4yeiagc/

絶縁劣化評価試験システム
IMV
引用元:IMV公式サイト
https://www.landingpage-synergy.com/k4yeiagc/
                           
印加電圧設定 1.0V~250V
試験所数 日本国内7・海外3拠点
誤差の影響が大きい低電圧でも、
正確な試験が可能
リアルタイムで測定物の電圧を検知・自動補正し、意図した通りの負荷を実現。そのため信頼性の高い試験結果を提供可能。
湿度環境を試験室外で生成し供給する方式を採用。外部環境の影響を受けにくく、設定湿度で安定した試験が可能。
EV/HV車向けパワーデバイス(IGBT)
車載用ECU
高電圧センサ基板
ワイヤハーネス
端子
など
ESPEC
ESPEC

引用元:ESPEC公式サイト
https://www.espec.co.jp/products/measure-semicon/25kv/

高電圧絶縁抵抗評価システム
ESPEC
引用元:ESPEC公式サイト
https://www.espec.co.jp/products/measure-semicon/25kv/
                           
印加電圧設定 2.5kV
試験所数 国内6拠点
高電圧のオーバーシュートを抑え、
安全に試験可能
高電圧試験での絶縁破壊や誤判定を防ぐ「ストレス電圧制御機能」により、オーバーシュートを抑え、滑らかな電圧立ち上げで信頼性の高い結果を実現。
扉の締め忘れや異常時の電圧印加を自動で中断するなど、安全機能を搭載。同一メーカー製だからこそ、試験機と連動した安全設計の相談も可能。
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