マイグレーションは電圧印加+湿度というよくある使用環境で発生しやすい現象でありながら、最悪の場合は短絡事故や機器故障を引き起こします。マイグレーション(エレクトロケミカルマイグレーション)試験は、部品選定、基板設計、製造工程の最適化に欠かせない重要な検証方法です。試験の概要を理解することで、なぜこの評価が電子機器の信頼性確保に不可欠なのか、その理由が見えてきます。
ここでは、マイグレーション試験の基本的な考え方や定義・規格、他のテストとの違いについてわかりやすく解説します。
マイグレーション(エレクトロケミカルマイグレーション)試験とは、電子機器の基板や部品間において、高湿度環境下で電位差を印加した際に生じるイオンの移動やデンドライト形成による絶縁破壊・短絡のリスクを評価する試験を指します。
試験実施の目的は、以下の3点です。
マイグレーションは、「電解反応」+「イオン拡散」+「析出反応」が連動して起こる劣化現象です。
マイグレーション試験ではこのプロセスを加速再現するために、高湿度(85℃/85%RHなど)+ 直流電圧(数V~数十V)を長時間印加し、抵抗変化や金属析出の有無を測定・観察します。
マイグレーション試験の特徴は、「水分(電解質)+ 電位差」でマイグレーションを発生させようとする点です。他の試験(熱劣化・湿度劣化)では高温・高湿といった負荷をかけますが、電位差を付加しなければマイグレーションはほとんど顕在化しません。
他の試験と比較すると、以下のような違いがあります。
| テスト名 | 主な目的・対象 | 条件例 | 評価指標 | 主な違い |
|---|---|---|---|---|
| マイグレーション試験 | 電位差 + 湿度による絶縁劣化確認 | 例:85℃/85%RH + DC50V, 1000h | 抵抗変化、デンドライト発生など | 電気化学反応が中心。水膜+電圧で金属析出。 |
| 熱劣化試験 | 高温環境での材料・部品の劣化確認 | 例:125℃ / 1000h (通電/非通電) | 材料変質、抵抗値変化など | 主に熱分解や酸化。湿度や水膜は考慮しない。 |
| 湿度劣化試験 | 湿潤環境での樹脂や金属腐食確認 | 例:85℃/85%RH (無電圧) / 500h | 外観変化、腐食生成物など | 電位差がないため、腐食は起こりやすいがデンドライトは生じにくい。 |
| サーマルサイクル試験 | 温度急変による熱応力評価 | 例:-40℃ ↔ +125℃、数百サイクル | はんだクラック、基板熱応力など | 温度差による機械的ストレスが中心。電気化学要因は小さい。 |
以下ページでは、マイグレーション試験機の規格と基準について詳しく解説しています。 ぜひ参考にしてください。
電子回路の高密度化や電圧の上昇に伴い、マイグレーションによる短絡や機器故障のリスクは年々高まっているため、マイグレーション試験の意義はますます大きくなっています。ここでは、マイグレーションのよくあるトラブルや対策についてまとめています。
マイグレーションで頻出するトラブルは、主に以下の4点です。
マイグレーションを防ぐには、以下5つの対策が効果的です。
以下ページでは、よくあるトラブルや防止策について詳しく解説しています。 ぜひ参考にしてください。
イオンマイグレーション試験機の
トラブル対策について
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マイグレーション評価にはさまざまな試験方法がありますが、ここでは主要な試験の種類とその概要についてまとめます。
高温高湿環境(例:85℃/85%RH)下で、試料に一定の直流電圧(数10V~100V程度)に印加し、長時間(数百~1000時間)通電する方法です。標準的なマイグレーション試験としてよく利用されており、IPC-TM-650やJIS Z 3197などでも規定されています。
定常高温高湿バイアス試験のメリットは、実使用に近い温湿度条件を再現でき、配線や基板材料の評価に適する点です。ただし、試験時間が長くなるため、常時モニタリングシステムで瞬間的な短絡も逃さず検出する必要があります。
温度と湿度を周期的に変化させ、基板表面に結露を発生させながら電圧を印加。水膜の形成と乾燥を繰り返し、マイグレーションを加速させる方法です。結露リスクの高い環境を再現できるため、車載機器や屋外用通信機器の試験に用いられます。
通常の定常高温高湿試験より短時間で顕著な絶縁劣化を起こせますが、温度変化時の急激な結露の制御が難しく、試験再現性を確保するためにはノウハウが必要です。
高温高湿(110〜130℃、85%RH前後)+加圧下にさらすことでマイグレーションを加速させる試験方法です。IEC 60068-2-66やJEDEC JESD22-A110などで規定されている試験であり、半導体パッケージや基板の耐湿評価で広く用いられています。
HASTには、85℃/85%RHの長期試験を大幅に短縮できる(加速係数が大きい)というメリットがあります。一方で、高圧環境下での試験であるため実使用環境と故障モードが異なる場合があるため、加速因子の見極めが重要です。
プリント基板上の電極間に水滴やろ紙を介して高密度の水分を供給し、マイグレーションを極端に加速させる試験方法です。数分〜数時間という短時間でデンドライトの成長を観察でき、開発初期段階における材料比較に有用です。ただし、実際の使用環境と比較すると極めて過酷な条件であるため、この試験結果を実使用寿命に当てはめる際には慎重な判断が求められます。
以下ページでは、マイグレーション試験の測定方法について詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
対象物に合わせて選べる
マイグレーション試験受託会社
おすすめ2社を紹介
ECMとEMは、いずれも電子機器の信頼性に関わる重要な現象です。ECMは湿度やイオンの影響によって絶縁不良が起こり、EMは大電流によって配線金属が移動することで断線や短絡を引き起こします。それぞれの違いを理解し、試験条件を適切に設定することで、製品の品質や寿命を評価する際の参考になります。また、長期的な稼働性を検討する上でも役立ちます。
エレクトロケミカルマイグレーションとエレクトロマイグレーションの違いについて詳しく見る
エレクトロケミカルマイグレーション受託試験は、自社で設備を導入せずに基板の信頼性評価を行える方法です。専門機関に依頼することで、試験の効率化や信頼性の確保につながります。一方で、条件設定の柔軟さや費用、情報管理に注意が必要です。依頼先の対応範囲を確認したうえで利用を検討するとよいでしょう。
エレクトロケミカルマイグレーション受託試験について詳しく見る
高温高湿バイアス試験(高電圧イオンマイグレーション試験)は、電子部品の信頼性を評価するために重要な手法とされています。試験機を用いてイオンマイグレーション現象を意図的に再現し、その影響を早期に把握することが可能です。試験機の性能が結果に影響することから、慎重に試験機を選択しましょう。
高温高湿バイアス試験(高電圧イオンマイグレーション試験)について詳しく見る
温湿度サイクル試験(結露試験)は、温湿度変化により腐食や絶縁不良が発生するかどうか、また、発生する場合はどのようなタイミングで起こるのかを調べるための検査です。試験結果を解析することで、製造や設計段階で改善が必要な箇所を見つけやすくなります。精密な温湿度制御が求められるため、試験目的に適した機器を選定することが重要です。
マイグレーション試験機を活用したフラックス試験として行われることがあるのが、はんだ付用フラックス試験です。フラックス残渣がマイグレーションを引き起こすことがあり、その評価をする際に役立ちます。
10倍以上の拡大鏡で試験結果を確認し、樹枝状の金属が一方の電極から伸びているか調べることで評価が可能です。
絶縁抵抗試験は、電圧をかけた際に、どれだけ電流が漏れにくい状態を維持できるかを確認するために行います。特に高温多湿の環境ではマイグレーションが発生しやすく、金属イオンが基板表面に移動することで電流が流れやすい部分ができ、抵抗値が下がることがあります。
試験には高温・高湿の状態を一定に保てる恒温恒湿槽などの準備が必要です。
印加電圧の違いによって求められる試験環境は大きく異なります。ここでは、対象物に合った試験を強みとする受託試験会社を、2社ピックアップしてご紹介します。

引用元:IMV公式サイト
https://www.landingpage-synergy.com/k4yeiagc/

| 印加電圧設定 | 1.0V~250V |
|---|---|
| 試験所数 | 日本国内7・海外3拠点 |

引用元:ESPEC公式サイト
https://www.espec.co.jp/products/measure-semicon/25kv/

| 印加電圧設定 | 2.5kV |
|---|---|
| 試験所数 | 国内6拠点 |