電子部品やプリント基板は微細化が進んでいますが、それに伴って発生しやすくなるのがエレクトロケミカルマイグレーション(ECM)とエレクトロマイグレーション(EM)です。いずれも「マイグレーション」と呼ばれる故障ですが、原因や影響、試験方法は異なります。この記事では、ECMとEMの概要や違いについて解説します。
エレクトロケミカルマイグレーションやエレクトロマイグレーションの評価を依頼する際は、まず試験対象や目的に合った条件を整理しておくことが大切です。とくにマイグレーション試験では、印加電圧の大きさや高温高湿環境の有無によって、適した試験機・試験槽が変わる場合があります。
たとえば、狭ピッチのプリント基板や微小電子部品では低電圧での細かな評価が求められる一方、EV部品やパワーデバイスでは高電圧条件での評価が必要になるケースもあります。また、水分や湿度の影響を確認したい場合は、HAST装置や恒温恒湿槽との組み合わせも検討対象になります。
低電圧条件での評価は、狭ピッチ基板や小型電子部品、微細な配線を持つ部品などで検討されることがあります。導体間の距離が短い場合、わずかな絶縁劣化でも不具合につながる可能性があるため、数V〜数十V程度の電圧を安定して印加できる試験環境が求められます。
試験を依頼する際は、評価したい部品の使用電圧や導体間距離、測定したいチャンネル数などを事前に整理しておくと相談しやすくなります。低電圧領域では、電圧制御の細かさや測定精度も確認しておきたいポイントです。
高電圧条件での評価は、EV関連部品やパワーデバイス、高電圧回路を含む部品などで必要になる場合があります。こうした対象では、通常の電子部品向け試験よりも高い電圧を印加することがあるため、必要な電圧範囲に対応できる試験機を選ぶことが重要です。
低電圧向けの試験機では、求める条件を満たせない可能性があります。受託試験を依頼する場合も、試験対象の定格電圧や想定される使用環境、必要な印加電圧を伝えたうえで、高電圧評価に対応できるか確認しましょう。
エレクトロケミカルマイグレーションは、水分やイオンの影響を受けて発生することがあります。そのため、湿度や温度を高めた環境で耐性を確認したい場合は、試験機だけでなく、HAST装置や恒温恒湿槽との併用も検討する必要があります。
HAST併用の試験では、温度・湿度・印加電圧・試験時間などの条件設定が評価結果に関わります。依頼前には、実使用環境に近い条件で確認したいのか、より厳しい加速条件で評価したいのかを整理しておくと、適した試験方法を選びやすくなります。
このように、マイグレーション試験は「何を評価したいか」によって必要な条件が変わります。試験依頼を検討する際は、低電圧向け・高電圧向け・HAST併用のいずれが必要かを確認したうえで、試験機や受託試験先を選びましょう。
試験条件を検討するには、まずECMとEMの違いを理解しておくことも重要です。以下では、それぞれの発生原因や評価方法の違いを解説します。
エレクトロケミカルマイグレーション(electrochemical migration:ECM)とは、水分や特定のイオンが関与して絶縁不良を引き起こす現象です。基板設計や使用環境によってリスクが高まるため、注意が必要とされます。
ECMは、電子機器の基板や導体間で発生します。本来は電気を通さない絶縁部分に、水分や汚れなどの影響で金属イオンが溶け出して移動すると、隣の導体に到達してしまうことがあります。その結果、「デンドライト」と呼ばれる金属の細い橋が成長し、ショートにつながることがあります。
エレクトロケミカルマイグレーションが発生すると隣接する電気配線が金属でつながり、本来電気が流れない経路に電流が流れてしまいます。これによりショートが起こり、基板の破損につながる場合があります。ショートの規模によっては発火の恐れもあるため、十分な対策が求められます。
代表的な評価方法として、「ECM試験」があります。ECMは導体間に電圧が加わることで起こりやすくなるため、試験では回路基板の試料に電圧をかけ、湿度や温度を高めて耐性を評価します。
エレクトロマイグレーション(electromigration:EM)とは、電子デバイス内部にある金属配線が強い電流密度の影響を受けた場合に発生する現象です。
主に半導体チップや配線の内部で発生し、微細化が進んだIC(集積回路)で起こりやすいとされています。原因は、配線内の金属原子が長時間の大電流によって移動することです。電子が原子と衝突しながら流れることで原子が移動し、これが繰り返されると断線や短絡を引き起こす可能性があります。
エレクトロマイグレーションによって配線の金属が移動すると、断線が発生するリスクがあり、一部ではショートの原因になることもあります。外見から劣化を確認することは難しく、気づかないうちに半導体やICチップの寿命を短くする要因となります。
EMは大電流によって起こる現象のため、試験では配線に電流を流して評価します。温度の影響を大きく受けることから、高温環境で電流を流し続ける試験方法が一般的です。
名前は似ていますが、エレクトロケミカルマイグレーション(ECM)は外部環境に起因し、エレクトロマイグレーション(EM)は電流の影響によって発生する点に違いがあります。それぞれの特性を理解したうえで、目的に応じた試験方法を選ぶことが重要です。
イオンマイグレーションによるトラブルを防ぐには、「発生リスクの把握」にあわせて、適切な評価試験の実施も不可欠です。
マイグレーション試験では、試験対象によって求められる印加電圧の条件が大きく異なります。たとえば、狭ピッチのプリント基板や微小電子部品などでは数V~数十Vの繊細な電圧制御が求められる一方で、EV部品などのパワーデバイスでは数千Vの高電圧に対応した耐圧評価が求められます。
このような背景から、当サイトでは試験機の選定において「印加電圧の大きさ」を判断軸としてマイグレーション試験と試験槽をご紹介しています。具体的には、低電圧試験に強みを持つ、IMVの試験機と平山製作所の試験槽(HAST装置)の組み合わせ、また高電圧に強みを持つESPECの試験機と試験槽(HAST装置)を比較し、それぞれの特長や活用シーンを整理しています。
マイグレーション試験機の導入を検討中の方は、ぜひ当サイトのトップページ(下記リンク)をご覧ください。各社は受託試験も行っているため、導入前に受託試験サービスを試してから検討することも可能です。
最適なマイグレーション試験機・試験槽を見つけるヒントに!
印加電圧の違いによって求められる試験環境は大きく異なります。ここでは、対象物に合った試験を強みとする受託試験会社を、2社ピックアップしてご紹介します。

引用元:IMV公式サイト
https://www.landingpage-synergy.com/k4yeiagc/

| 印加電圧設定 | 1.0V~250V |
|---|---|
| 試験所数 | 日本国内7・海外3拠点 |

引用元:ESPEC公式サイト
https://www.espec.co.jp/products/measure-semicon/25kv/

| 印加電圧設定 | 2.5kV |
|---|---|
| 試験所数 | 国内6拠点 |